事故・世相・定刻・責任・決断・安堵
空港出発3時間前、妻の運転する車で仏子駅へ。乗車、座る、ホッとしていると車内アナウンス、「只今、JR山手線は人身事故のため、全線で運転を見合わせております」。私はほとんど電車に乗りませんので、そう聞いたことはない語句の並びでした。池袋まで40分程、掛りますのでそれまでには動き出すのではないかと、たかをくくり持参していた書物に目を落とします。所沢を過ぎ、石神井公園とうとう池袋、やはり止まったままでした。10時55分発とかち帯広空港行きに乗り、3時より工場に入り、翌日からの準備をする予定です。どうしても間に合わせなくてはなりません。
時間はあるはずですので、ゆっくり落ち着いてと自分に言い聞かせます。こんな経験は15年ぐらい前に、新幹線が台風で動かなかった時、以来の出来事です。西武線の駅員に聞くと、JRでお願いしますと言われ(当たり前か?)、そちらへ走ります。尋ねるとモノレールも正常ではないようですと言われます。すると残されたのは、品川から京浜急行で羽田へゆくルートです。バスを思いつきました。池袋から羽田行きのリムジンはないものか?尋ねました。駅員さん、要領を得ません。そうこうしているうちに時間ががどんどん経過してゆきます。ここは私へ仕事を依頼していただいている方に電話をし、判断を仰ぐことにしました。品川にある会社で、度々、航空機を利用されていらっしゃる方です。指示どうり丸ノ内線へ乗車、最初の駅、新大塚でしばらくたっても動きません。「先行の電車が進んでいません停車信号です」。振り替え輸送の大混雑で、スムーズな運行ができていないのではないかと思いました。また電話(実にいやな役回り、静かな車内で私ひとり電話をかけなければなりません)動き出し、後楽園で降りてタクシーを利用することとなりました。停車、扉が開くと改札を抜け、大きな道路に出て車道に立ちます、運転手さんが見つけてくれてこちらへ右折します。とりあえず東京へと伝えます。そして東京、浜松町、品川までの時間を尋ねます。最後に羽田までの時間も。一方、発注者は確実に搭乗時間に間に合い、安い経費で済む方法を探しているようでした。最終的な結論は羽田までそのままタクシーで行くことになりました。羽田空港到着後チェックインを済ませ、搭乗時間ギリギリに着いたのですが何かおかしいのです。搭乗が始まるどころか、皆さんゆったりと腰かけています。そしてアナウンス、「帯広行きの便は到着が遅れましたので、只今、整備を行っております、ご搭乗はもうしばらくお待ちください」と。
日々、様々なことが起こり、そのつど対応を迫られるものですが、自らに責任を負えること、そうでないこと、困った時にどう対応するか、誰に相談するか。
この度のことは、今の世相、先進国において、群を抜く自殺者の数を誇る我が国の実情を知りました。そしてタクシードライバーは、私の乗る日は大概、止まりますよ、と言います。137億年の歳月を経て、この世に生れてきたものが自ら死を選ぶ、何とも、もったいない限りですね。生きてさえいたなら、次の瞬間、希望がわいてくるかもしれないのに。
そして、私に指示をしていただいた責任者の速やかな判断、決断に感謝いたします。空港到着後は何事もなく、一週間の仕事を無事終えることができました。